フィリップス/ピュー(角谷快彦訳)『博士号のとり方――学生と指導教官のための実践ハンドブック』出版サポート大樹舎、2010年、という本を読んでいます。大学院生のための本でもあるのだけど、サブタイトルにあるように、指導教員のための本でもあると思います。
- 作者: エステール M フィリップス,デレック S ピュー,角谷快彦
- 出版社/メーカー: 出版サポート大樹舎
- 発売日: 2010/01/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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それはさておき、僕などが悩むケースの一つは、「どうすればいいですか」「これでいいですか」と(頻繁に)聞かれるケース。「いや、そんなこと聞かれてもね」と思う一方で、さりとて、「そんなことを聞いてくるようでは、院生として失格だ」などと言い放つわけにもいかないとも思うわけです。
このようなケースについて、この本ではこんな風に書いてあります。「研究が進むごとに指導教官のところに行き、これで十分かどうか聞かなければならないとしたら、あなたは間違いなく博士号の水準に達していない。博士とは、プロ研究者の仕事の水準を自分で評価できる者に与えられるのだ」(51頁)。なるほど、そういう風に説明すればよいかと思いました。正確に言うと、「そんなこと聞かれてもね」と思う時には、つまりこういう風に思っているわけです。それを言語化してくれた、という感じです。
ただし、院生が一方的にだめなのだという話ではもちろんありません。こんなことも書いてあります。「批判が厳しすぎると学生には好ましく受け止められない。大切なのはよい点があれば褒めることである。博士号取得者にインタビューした際、男女を問わずこの話題になると涙を流す人が多かった。博士課程というのは多くの学生にとって知的なだけでなく、非常に感情的な経験なのだ」。「学生は、自身の研究を自己評価し、努力と結果の乖離を自分で調節できるようになると、少しずつ指導教官のフィードバックを必要としなくなる。学生が自らの自己評価に自信を持つ。これは協力的な指導教官の、継続的で建設的な批判の賜物なのだ。学生はこの種の助けがなければ高い確率でやる気を削がれ、自信を失い、博士号取得まで辿り着けない不安に襲われる。また将来に大きく影響を与えかねない。」(222頁)。
他にも、特に第11章には、指導教員の心得的なことがたくさん書いてあるようです。自分がどこまでできているか、自分自身を反省し、今後の指導に活かすよい機会と思って読書してます。