読書

少しずつ読んでいた熊沢誠労働組合運動とはなにか』岩波書店、2013年、をようやく読了。

労働組合運動とはなにか――絆のある働き方をもとめて

労働組合運動とはなにか――絆のある働き方をもとめて

熊沢先生の本を読むと、労働組合が必要な理由がよくわかる。
その中でも重要なことは、組合が(労働者間の)競争を制御するということだと思う。まあ、昔は当然そう思われ、かつ、そのことが望ましいとも思われていたことかもしれないが。
「労働における」が前提であることに留保が必要だとしても、このような意味での組合の意義は確かに労働と言う活動そのものの役割を抑制することにもつながる面があるのではないかと思う。その限りで、実はベーシック・インカム論との親和性もあるのではないかと思った次第。おそらくBI論者(たとえばオッフェ)であれば、組合の/働くことの内部だけで労働とひいては競争の論理の抑制をもたらすことは不可能なのだ、といった指摘をするとは思いつつ。
他方で、労働組合が必要であるにもかかわらず、その活動に人が集まらないことは、正規/非正規の分離も含む「個人化」ゆえのことで、不可避的な面があるのではないかとも思ってしまう。個人的ではなく、集合的な行為、集合的な問題解決が重要であることは当然として、そのような集合性が担保できなくなってきていることをどのように考えればよいのか。一部の組合の「成功例」では、趨勢を転換するには必ずしも十分ではないように思われる。