セミナーなど

 本日は、ANU出身で、現在イギリス・ウォーリック大学のJohn Parkinson氏が訪れ、彼の報告を聴くセミナー。いつもは1時間30分なのですが、今回は、母校に戻ってきた彼への歓迎の意味もあったのか、2時間でした。
 内容は、彼が最近取り組み始めているdeliberative society論(と彼は呼んでいる)のプロジェクトの概略について報告するもの。要は、それぞれ個別の熟議の場の研究ではなく、それらがより大きな場とどのようにつながるのか、(セミナーの後半のキーワードとなっていた言葉で言えば)「伝導transmission」されるのかについて、研究しようというものです。
 予想に反してパワポなしで、ちょっとあせったのですが(苦笑)、事前に送信されていた、彼の研究計画をざっと読んでいたこともあって、後半の細かい説明の部分を除いて、アウトラインはよくわかったと思います。
 彼が、意見のconnectingとかbroadeningあるいは上記のようなtransmissionということを強調していたので、connectionやbroadeningには、いろいろなやり方があり、問題は、「熟議的な」それをそうでないそれからどう区別するかではないか、ということを質問しました・・・が、うまく伝わったかどうか。
 でも、後半の議論では、僕の理解した限りでは、僕の質問と同じ論点が焦点になっていたと思うので、まあ、よかったことにしましょう。


 彼のプロジェクトはまだ始まったばかりのようですが、昨年9月に彼が中心になって、イギリスで国際会議が開かれ(下記URL)、そこで発表されたペーパーをまとめた論文集の出版計画が進行中だそうです。メンバー的に出版が待ちどおしいです。
http://www.york.ac.uk/depts/poli/research/conferences/deliberativesociety.htm


その他、今週は、月曜にはマレーシアの某政治家の講演会、火曜には、今いる学部のセミナーで、日本から半年来ている院生の某さんの報告などがありました。英語で堂々と質疑応答をこなしているのはすごいものです。あれくらい自分もできなければいけないのでしょうけれど、問題はリスニングだなあ、やっぱり。。。


あと、ちょっと前に送ってもらっていた、ポスドクのHayleyのペーパーへのコメントをようやく送りました。ドライゼクらのdiscursive representationの概念を、南米諸政府(特にボリビア)の環境国際会議における発言に応用しようという感じのペーパーです。彼女が言っている状況が、representation of personではなく、representation of discourseと言えるかどうかは微妙で、なお議論が必要ではないか、というようなことをコメントしました(それ以外に、よい諸点ももちろん!)。
僕自身がまだdiscursive representation概念をよく理解できていないので、的を外していないかちょっと心配でしたが、返信を見る限り、重要なポイントを指摘してくれたと言ってくれているようなので、よかったです。
 なお、discursive representationについては、

  • John S. Dryzek and Simon Niemeyer, "Discursibe Representation," American Political Science Review, 102(4), 2008, pp. 481-493

を参照してください。この論文、political theory系でAPSRなどに載る論文がどのようなものかについての、一つの参考にもなるような気がします。